2013年8月5日月曜日

ユーラシアの端の首都にて

さて、いまいるエシュトレモシュからポルトガルの首都リスボンまでは約150kmの距離。
大体1日半の距離だ。
だから今日は100kmちょっと走って、適当な所で野宿して、明日の朝リスボン入りしようと思っていた。
ところが、道中ほとんど起伏らしい起伏もなく、緩やかに緩やかに、
それこそ体感できないくらいゆっくりなんだけれど、確実に標高を落とす道のりに
気がつくと随分ペースが早まっていた。
景色も悪く言えば退屈な草原が続くだけの単調な風景だったので、それに拍車をかける。
さらに思いがけず、ほとんど風に吹かれることがなかったのだった。
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だから気がつくと夕暮れ前には130km近く走っていて、その頃周りはもはや首都圏入りしていて
野宿しようにもなかなかよい場所が見つからなかった。
仕方ないので、もう行ってまえ!とばかりにペースをあげてリスボン入りを決めた。

けれど、思いつきは、時として裏目に出る。

リスボンにはイベリア半島最長の川テージョ川が流れていて、
大西洋を目の前にしてその川幅は5km近くに及ぶ。
そのテージョ川が最後の最後立ちはだかった。
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その風景、海のごとし。
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向こうにリスボンが見えているのに、渡れない。
地図によると、大きく迂回したところに自転車通行可の橋があるようだけれど、
それだと数10kmの遠回りになって日が落ちてしまうのでパス。
このあたりから対岸のリスボンに渡る船が出ているはずなので、それを探した。
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「リスボン行きのフェリーターミナルはどこですか?」
ポルトガルの公用語ポルトガル語は、スペイン語にかなり近い。
昔読んだキャプテン翼で、アルゼンチン代表と戦うツバサ君が
敵チームのキャプテン、ディアス君とポルトガル語で会話するシーンの注釈で
スペイン語とポルトガル語は、日本で言う標準語と関西弁ぐらいの違いと書いてあった気がする。
果たしてそれが本当に、その程度の違いなのかは知らないが、
僕がスペイン語で訊ねても、相手は意味を理解してくれる。
返事はポルトガル語だから、若干こっちは理解できないこともあるけれど。

まぁ話は逸れたが、なんとかスペイン語押しでフェリーターミナルを見つけ出す。
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対岸のこのあたりはリスボンのベッドタウンになっているようで
フェリーが頻発していて、日常の足になっているようだ。
自転車積み込みも問題なし、いざリスボンへ。

20分ほどでリスボン市内へ。
リスボンは7つの丘を持つ街と呼ばれていて、坂道が多いそうなのだが、
とりあえずウォーターフロントから旧市街あたりまでは問題なし。
それよりもトラムの線路がかなり走りづらい。
こういう車道と並走するトラムは面倒。
線路の溝って自転車のタイヤ幅と近いので油断するとハマって転ぶ。
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何か公的な建物?
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旧市街はさいの目にストリートが走っていて分かりやすい。
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謎のタワー。
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って観光している場合じゃなくって、日が暮れてしまう。

リスボンに渡るフェリー同様、リスボンの宿も、今日到着するつもりじゃなかったから全くのノープラン。
いったいどこに安宿があるんだ。
でかでかと、「ホテル」とか「ペンション」とかのサインがあればいいんだけれど、
こういう歴史感の漂う重厚な街は大概そうなのだが、
景観を守るためか、看板も割と控えめなことが多い。
おまけに街の雰囲気も手伝って、見つけたホテルもやたら立派に見える。

結局、インド系の経営するホテルに投宿。
30ユーロ。高~って思ったけれど、この辺じゃこれが相場だという。

仕方ないなと、割り切り、シャワーを浴びて街へ繰り出す。
赤橙色の控えめな明かりが、迫り来る夕闇に柔らかい影を作り出し、随分と雰囲気がいい。
時折、「ドラッグあるよ」といういかがわしい輩が、声を掛けてくるが、それはご愛嬌。
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ん?
なんか見覚えあるのが見えたような…?

ってあれは!
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無印良品さんじゃないっすか。
リスボンにお店があることは知っていたけど、宿と同じ通りにあるとは、思いがけずびっくり。

そういえば、MUJIの商品を扱うストアは何回か見かけたけど、海外の店舗は初めてだ。
閉店間際のお店に駆け込み、数年前これでもかというくらい見てきた商品たちを再び手に取る。

なんとなく他の企業の商品たちとは違う感覚が伝わってくる。
懐かしいような、心の隅っこがスッと埋まっていくような、そんな感覚。

それは決して自分の勤めていた企業だからというだけでなく、
やはり無印良品自体が持つ、暮らしのあったらいいなを体現した商品だからこそ
この馴染む感覚なんだと思う。

ひとしきり店内を見まわって、外に出る頃にはすっかり闇夜が街をつつんでいた。

今夜の晩ご飯は、何にしよう?そう思いながら街歩きをしているとき、
すれ違った女の子の提げた紙袋には「MUJI」と書かれていた。

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