2013年4月21日日曜日

背中の意味

さぁ、いよいよ最終ステージティエラ・デル・フエゴへ。
朝、アレナスの免税特区ソナフランカの外れにあるフェリーポートに移動し、フェリーのチケットを買う。
日に一本という少ない運航スケジュールを差し置いても、
ターミナルには溢れんばかりの人たちが船待ちをしていた。

チリ領とアルゼンチン領で割譲されるフエゴ島。
西側のチリ領にはアレナスからのフェリーの寄港地であるポルベニール以外、街らしい街はない。
にも関わらずのこの人の多さ。
みなアルゼンチン側へと向かうのだろうか?

予定時刻を15分ほど過ぎてフェリーは出港。
3時間ほどの船旅、乗船が最後の方だった僕にいい席は残っておらず、通路を向いた席に座る。
天候の行方がイマイチで、風もそこそこ出ていたため波が立っていた。
内海にも関わらず、巨大なフェリーがかなり揺れる。
フェリーはもちろん、乗り物にとことん弱い僕は、目をつむってひたすら耐えるのみ。。。
しばらくすると、乗客の多くが甲板に出て行ったので、おそらくフエゴ島が見えたのは察しが着いたが
僕は全くもってそれどころではなかった。

船酔いにへろへろになりながら、下船。
まったく、最果ての地にやってきたロマンも感慨にも浸るどころではなかったもんだ。

相変わらず天気は思わしくない。
一応ポルベニールにもいくつか宿はあるようで、もし天気が崩れたらここに泊まることも考えていたが
せっかくこの地にやってきた勢いをここで途切らせるのは勿体無いと、出発することに。

街の郊外に出ると今再びのダート。
そして早くも雨が降ってきた。
けれど、西からの強い強い風が濡れた服をすぐに乾かしてくれた。

初めの40㎞ほどは何度もアップダウンを繰り返すきつい道だった。
海外線を行く道を走り終え徐々に内陸に入っていくに従い、道の起伏はなくなっていった。
風は常に西から吹いている。
アレナスへの道のとき以上に強い風に運ばれて、ガタガタのダートにも関わらず時速40㎞近く出ていた。
背中を押される、とはこのことだ。

ある自転車乗りが言っていた言葉があった。
あまりの風に恐怖心を抱いたら、風に背を向けて休憩し深呼吸をすれば落ち着きを取り戻せる。
背中はきっとそのためにある。と。

パタゴニアの風はまさしく背中で受け止めるに値する風だった。
正面で受け止めると、よろよろとどこかへ吹き飛ばされてしまいそうな風も
背中を向けると不思議と立っていられた。

道の進行上、向かい風の中を走るような場面でも、一度立ち止まり風に背を向けて深呼吸をすると
また風に立ち向かう勇気が湧いてくる。

そんなとき、僕もしみじみ思うのだ。
背中はきっとそのためにあるのだな、と。

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