2013年3月1日金曜日

美しき林道の始まりは雨

横になることさえ、ままならない狭い船室で一夜を過ごすと、
フェリーはやがてチャイテンの港に到着した。
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チャイテンの街は数年前のコルコバード火山の大噴火によって街が壊滅的に破壊されてしまったという。
その影響が未だに残っているからかなのか、あるいはまだ8時前という早い時間帯だからなのか
街の規模の割に人気が全く感じられない、不気味なくらい静かな街だった。
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今にも降り出しそうな雨雲がより、その印象を際立たせる。

このチャイテンから僕のカレテラアウストラルの自転車旅行が始まる。

アウストラル街道と呼ばれるこの国道7号線は一部を除き、ほとんどが未舗装のダート。
交通の便も極めて悪く、ある意味これより以南のパタゴニア地方よりアクセスが困難な場所である。
深い森が左右に広がり、前方には大迫力の氷河が見え、自転車のそばを美しい清流が伸び、
その先に輝く湖が点在するのだという。

エクアドルで会ったようこ&ひろさんが以前にここを走っており、
ここをこれでもか!とプッシュしていたので僕も相当に楽しみにしていたコースだった。

始まりの街チャイテンでヒッチハイクを試みるというリンさん、ススムさん。
彼らとお別れと再会を約束し、そっとペダルを回し、カレテラアウストラルの旅をスタートさせる。

すぐに緑の濃い森が広がった。まもなく、雨がポタポタと降りだした。
このへんの雨はシトシトと長く振る日本に近い雨。
フードの先から滴る雨粒の匂いはどこか馴染みのある匂いでもあった。
雨の匂いに混じって、薪の爆ぜた香りがかすかに漂う。
姿勢を楽にして、自転車から当たりを見回すと
深い森に紛れた小さな木造の家からちょん煙突が伸びている。
森のすぐ後ろには、ほとんど垂壁に近い岩山があり、
そこから流れ落ちる雨は、ぬるりとした質感のある怪しげな光を蓄えている。
遠くでは見事な滝が勢い良く山を駆け下りていた。
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劇的な絶景ではない。
しかしすっと染みこんでくる懐かしささえ感じるこの景色の一部に
まもなく僕と自転車も馴染んでいった。
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