2013年1月12日土曜日

太古と現世のコントラスト

チレシートを出発すると、周囲の景色は再び赤みを帯びた岩がむき出しの渓谷地帯へと突入。
途中からダート道となり、1,000mほど登ったミランダ峠から見る谷は
まるでザイオンナショナルパークをのよう。
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まるで、恐竜がどこかに住んでいそうな気配。
だが、それもそのはず。その理由は後述する。

この日は、峠を下り、ルタ40から30kmほど逸れた村でキャンプ。
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ちなみに宿代の高いアルゼンチンでは2日ほどキャンプ生活して、大きな街の入口まで行き、
翌日午前中にホテルチェックイン、といったかんじで過ごしている。
キャンプをする小さな村にも宿があったりするけれど、快くキャンプさせてくれる。
村の広場には大抵フリーのWi-Fiが飛んでいて簡単なメールチェックも問題なし。
広場のWi-Fiのユーザーネームは“Wi-Fi Para Todo”
直訳すればみんなのWi-Fi。うむ、いい名前だ。

で、翌日。
朝からそこそこきつい南風に苦しみながらも、なんとかタランパヤ国立公園に入った。
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公園といっても巨大な敷地で面積は2,150平方km。
いまいちピンとこない人のために、さらにいまいちピンとこないお馴染みの指数東京ドームで例えると…
実に165個分!!
うーむ、やはりどのくらいか分かりづらい。
この東京ドーム◯◯個分って一体誰が言い出した単位なんだろう。
これがボリビア国民だったらウユニ塩湖◯◯個分になったり、ペルー国民だったらマチュピチュ◯◯個分になるのだろうか。
どちらにしても分かりづらい。
だれか、もっと分かりやすい指標を考案願いたいものだ。

さて、そんな巨大な敷地を20数kmほど南下したところに公園のメインゲートがある。
ゲートをくぐった先に駐車場と公園事務所、各種ツアーの窓口がある。
ここから先は広い公園の中でも核心部にあたるところで、ここから出るツアーでないと行くことが出来ない。
ちょうど、ここに到着した時あと15分でツアーが出るとのことだったので、慌てて荷物を事務所に預け出発。

ペルー、ボリビアと比べたら天と地ほどの差のある立派なバンに揺られ30分ほど。
そこには、屹立とした褐色の壁が両サイドに高くそそり立っていた。
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圧巻である。
ビルや学校など人の手がけた建築物にこそ、こんな直線的なシルエットは身近に見られるが
厳しい自然環境によって織りなされた高さ100mを超える垂壁を下から見上げると、
その暴力的とも絶対的とも言える自然と人間の力関係をまざまざと見せつけられる。
ただただ、そこに僕らはひれ伏すしかないのだ。
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これらの壁の地層は三畳紀の古い時代のもので爬虫類が反映し、原始哺乳類が出現した時代のもの。
アンデス山脈の隆起活動によって出現したこれらの断層には当然、恐竜の化石なんかも見つかっている。
先日のミランダ峠で、恐竜の気配を感じたのは当然のことなのだ。

また紀元前640年~紀元1180年ぐらいまでは人が暮らした跡が見つかっていて、赤茶の岩を
じっと目を凝らして見てみると彼らの残した壁画を見ることが出来る。
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この絶対的権力に挟まれ、彼らはどんな思いでこの地に生きたのだろう。
彼らの暮らした時間は僅か1800年程度であり、この壁は2億5000万年もの間この地に生きているのだ。
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ところで、この壁。
面白い仕掛けがある。
壁に向かって“オラ!”と大声をぶつけると、音が壁に反射して反対側の壁に飛んでいき、さらにまたそれが反射されて
“オラオラオラオラ…”と天然の反響効果が生まれる。
これはなかなかおもしろかった。
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その後、垂壁に挟まれた回廊を進むと、延々続くかに思われた壁がやがて途切れ見通しの良い場所に出た。
この辺りは今度は、腰の辺りがくびれた奇岩がポコポコと立つ、これまた異質な空間。
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近くに野生のグアナコが、僕等を不思議そうに見ている。
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圧倒的スケールの太古の世界に紛れ込んだ僕ら。
原始の世界は弱者と強者を明確に分ける。
そして、この数10km先、あるいは20000km離れた日本では
変わらず現代文明に囲まれた世界が同じ時間に流れていることを不思議に感じる。
どちらの世界が、いったいこの地球の今の姿なのだろう。
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ツアーを終えて、事務所まで戻ってくるとそこにはシンプルながらも小洒落たカフェやキンキンに冷えたペットボトル、
果てはWi-Fiまでもが飛んでいた。
バンに乗り込んで巡った2時間で、気の遠くなるような年月のタイムトラベルをしてきた気分だった。

ところで園内のエクスカーションは景観保護のため、ガイド付きツアーでないと行けないのだが
園内各地では観光客が歩きやすいようにと木組みの足場が設けられていたりしたのだが、
せっかく個人では入れないようにしているのに、これでは本末転倒なのではないかと思った。

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