2012年12月9日日曜日

燃ゆる湖

昨晩、僕を守ってくれた闇は朝になると、正反対の存在となる。
明け方の基本は-8度。風が一度吹けばあっという間に体温が奪われる。
テントの撤収だけで、指先の感覚が奪われ、慌てて太陽の差す日向に出た。
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再び30分ほどかけて元いた道、いやここでは畝と言ったほうがいいだろう。
そこへ戻る。
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今日は昨日と違って下り基調。
相変わらずスピードは出ないが、昨日よりいくらかマシな状況で下り坂を転げていった。

1時間ほど走ると、道幅の広い、ここは道といって差し支えないところにぶつかった。
といってもこのあたりにしてはマシなだけで、当然走りづらい。
砂こそ少なくなったものの、再び洗濯板状のコルゴーションが始まった。
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やがて、このルート上の目玉の一つArbol de Piedora 木の岩に到着。
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風雨によって根本が削られたバランスロック。
木というよりはブロッコリーって感じだけれど、まぁBrócoli de Piedoraじゃあかっこつかないもんな。

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近くにいって表面を見てみると、かなりなめらか。
同じように雨風で削られたアリゾナのアンテロープを思い出した。
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風が創りだした芸術品。当然風が恐ろしいほどに強い。
この岩に限らず周囲には奇岩が勢ぞろいしている。
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岩陰を背に早めの昼食。
岩に隠れると風はピタリと止んだ。しかし耳を傾けるとゴウゴウと風が轟く。
これが本物の風切り音なんだろうな。

奇岩から離れて昼食を取っていると、Arbol de Piedoraだけが周囲の奇岩群からポツリと離れていることに気がついた。
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なんだかその姿はどこかさみしげ。
他の岩々から彼だけ仲間はずれにあってしまったんじゃあないかという悲壮感が何となく漂う。

Piedoraを過ぎるてしばらく行く。
所々砂が深く、たまに砂にタイヤを取られて転倒する。
ちきしょう!と叫んでみるも、その叫びは木霊として返ってくるわけでもなく、ただただ砂の原野に吸い込まれていった。
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とここで大きなカーブにぶつかった。
カーブを曲がった先からなんだか妙なものが目に飛び込んできた。
なんだろう、目を凝らしてみてもその正体は掴めない。
まぁ、近づいていけばいずれ分かるかなと思いながら走っていると、急にその正体が分かった。

真っ赤に燃える湖だった。
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この湖はその名の通りLaguna Colorada(赤い湖)という。
遠くから見える湖は、この地球において、およそ湖の色とは考えることのできない異様な色を帯びていた。
そして、気のせいだろうか?
湖の湖面近くが揺らめいて見える。
たしか、このあたりも湯温は低いながら温泉が湧いているという情報があったはず。
温泉と外気の気温差が陽炎のような揺らめきを作っているのだろうか?
真偽のほどは分からないが、赤く染まる湖がゆらゆら揺らめく様は、まさにぐつぐつと煮え立つ地獄の沼そのものだった。

このコロラダ湖から向こうがエドゥアルド・アバロア国立保護区となる。
つまり、こんだけ苦労をしていて実はまだメインエリアの入口にすら立っていないのだ。
再び砂にタイヤをとられよちよちと湖畔にある公園ゲートと集落を目指した。
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入園量の150ボリを支払い入園。
まだ時刻は午後1時。
先に進もうか迷ったが、この赤い湖をもう少し眺めていたいのと、ゲートそばの集落にいたおじいさんの手招きにつられて
敢え無く今日はストップ。
半休ということで、おじいさんの経営する宿に宿泊し、砂まみれの装備の洗濯と清掃をした。

夕暮れ時、夕日に照らされた湖は、さぞかし真っ赤だろうと思って、吹きすさぶ強風の中、
近くの展望台まで行ってみた。
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が、全然赤くなく。。。
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昼間ぐつぐつと煮え立った地獄の沼は、魔法が解けてやや赤みだけが残る湖になっていた。
あとで聞いた話だと、太陽の関係で湖が真っ赤に染まるのは12時~14時くらいの間らしい。
図らずしも、僕は一番真っ赤な時間に湖にたどり着いていたのだ。

展望台には他のツアー客も立ち寄っていて、湖に対して感嘆たるため息を漏らしたりしていたが、
隣で僕は昼間の湖を思い返しつつ、一人得意げに宿に戻っていった。
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