2012年12月30日日曜日

高地の別れと最後の試練

サンアントニオの朝。
久々のベッドは快眠そのもの。
さすがに若干疲れが残っているものの、気持ち新たに出発。
夜中、ヒーターをつけっぱなしにしていたので、衣類も乾いていた。
袖を通すと洗剤のいい香り。
今日もがんばろう。
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さて、ここから先は2つのルートに分かれる。
 
一つはそのまま51号線をたどって標高1200m州都サルタへ向かう道。
20km先ぐらいから舗装路だそう。
 
もう一つは途中の分岐で曲がり、サルタには寄らずに南下するルート。
このルートは道中、幹線道路としては南米最高地点4895mのアカイ峠を越える未舗装路。
どちらもカファジャテという街で合流する。
 
どっちの道を行くか、これはずっと悩んでいた問題だった。
未舗装路も慣れてきたことだし、南米最高地点といっても今いるサンアントニオからは1200m程度のアップ。
何とかなるだろう。
 
問題は下り。
未舗装の下りは舗装路よりずっと神経を使う。
砂、岩、対向車に気を使いながら、スピードの出し過ぎも厳禁。
上りと違って、景色を見下ろしている分、次の楽しみも少ないように思える。
ナスカから標高をあげて2ヶ月半。
久々に下界に下りるにあたって、自分で稼いだ標高は気持良くくだりたいものだ。
また故障したカメラの修理や、ATMでお金を降ろさなきゃならないし。
それにアカイ峠の“幹線道路”としては“南米最高”という表現も何か限定的でピンとこなかった。
幹線道路の定義も曖昧だし。
そもそもボリビアなんかではただの轍を道と呼んでいるところを走った。
何かそれ以来、“道”というものへの自分の認識が変わってしまった気がする。
 
というわけで、多少遠回りになるがこのままサルタへ向かうことに。
サンアントニオを出ると再びダートの上り坂。
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ここからずっと下りだと思ってた自分には予想外だったが、
ちょうど前日見たガイドブックに、サルタ~サンアントニオ間を走る雲の列車号は最高4100m地点を走ると
書かれていた。
このコースはその線路とほぼ並走していくコースなので、おそらくそこまで標高は上がり直すと思い
まずは4100mを目指すことにした。
 
ダートと言っても恐らく定期的に手入れをされているのだろう。
道幅も広く、今までに比べるとはるかにマシ。
ただ、その分交通量が増え、トラックが巻き上げる砂煙が否応なしに口の中がジャリジャリと音を立てた。
 
途中、アカイ峠方面への分岐を過ぎる。
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しばらく走って20kmは越えたあたりで
救急車が僕の隣をけたたましい煙幕をあげて抜き去っていった。
以前にも書いたが、後ろから砂が来るとサングラスの内側に入り込んで不快極まりない。
勘弁してくれよと、俯き加減に自転車を漕いでいた。
やがて砂煙が風に流され、道が晴れてゆく。
その霞の向こうに何やら灰がかったものが見える。
 
あれは…
 
舗・装・路だ!
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アルゼンチン初登場のアスファルト。
あまりにも演出された登場の仕方に一人叫び狂う。
その上にタイヤを乗せると面白いぐらいによく転がる。
改めてアスファルトの抵抗のなさに驚く。
 
現在標高は4000m。
前方に峠が見えた。
あそこがピークだろう。
その峠まで、みるみる景色が近づいていく。
宝石の道、シコ峠を通って自分はこんなにもレベルアップしたのかと驚くほどに。
と同時にあまりにもストレスなく進む自転車に、ちょっとだけ寂しさを感じている自分もいた。
峠は果たして、この長きに渡るアンデス高地生活に終わりを告げる峠だった。
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そろりと下りはじめた自転車はあっという間に60kmに達し、ブラインドカーブが多い最初の数kmを駆け抜けると
風景はやがて視界の開けたダイナミックな渓谷地帯を滑るように下りていった。
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標高3600mくらいになるとあたりにはサボテンが林立し、にょきにょきと懸命に天へ向かって伸びていた。
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そんな風景をスピードに乗りながら、余裕をもって眺められる。
やっぱりアスファルトの下りは最高だ。
このままサルタまで突き抜けてしまえ!
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誰が利用するか分からない、荒野にポツンと建てられたバス停で昼ご飯を食べ午後の部出発。
 
この辺に下りてくると左右に見える岩の走が黒だったりオレンジだったりピンクだったりと色味を帯びてきた。
この近くには土が含む鉱物の成分の違いからカラフルに見えるウワマカ渓谷がある。
おそらくこのあたりも似たような性質を持っているため、色づいて見えるのだろう。
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綺麗だなーなんて口を開けながら見ていると、さっきまでと流れる景色のスピード感が違っているのに気付いた。
あれっと思ってメーターを見ると20km程度しか出ていなかった。
強い向かい風だった。
 
どうやら、この辺り渓谷地帯になっているため風のとおり道になっている模様。
標高も下がったのでこの辺には背の高い木々も生えていて、それらは一律して僕の進行方向と逆に斜めに生えていた。
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パタゴニアほどではないにせよ風が年中強いところのよう。
風はどんどんと勢いを強め、地形の関係上カーブに差し掛かるところでは、
風が集まってきて時に自転車は10kmを切るほど。
 
下りでこれって…
 
そこからはさっきまでのスピード感との幻影もあり、精神的に参った。
ちょっとづつ進んでいるのだが、アスファルトの抵抗がない分何となく押し戻されているような感じ。
 
それでいてサルタまで50kmを切ったあたりで、まさかの未舗装ダート復活!!
嘘だろ!?
少しの間だけかなと思ったがダートは延々続き、道はだんだんとか細くなり、やがて川沿いの絶壁を走るように。
なんで?なんで?
とかなり納得が行かなかった。
 
サンアントニオからサルタまではほぼ一本道。
間に大きな街は皆無。
となるとさっきまでの舗装路はどちらかの街からか作業員なり機材なり、アスファルトなりを持ってきて建設されたものだろう。
アスファルトの完成度は高く、ひび割れた部分も丁寧に補修されていた。
この舗装路を作るために、わざわざ未舗装の道を作業員たちが通って仕事をしていたと考えるとなぜ?と思ってしまう。
街の前後が舗装されてなくて、間のところだけ舗装されているなんて、ぬか喜びもいいところ。
だいたい作業をするのも街から舗装していった方が輸送も楽になるのでは??
 
どうしても作業が困難な断崖絶壁の道というわけでもなかった。
実際、崖沿いの道を嫌った車が、広い川沿いを走る轍を作っていた。
 
うーむ、納得が行かんなぁ。
せっかく気持良く下れると思ったのに。。。
ぶつぶつと文句を言いながら、けれど再び手足にガタガタと伝わる振動に少し嬉しさを感じつつ山を下った。
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