暖かな室内の野宿は快適そのもので。
ぬくぬくと翌朝を迎えることが出来た。
温泉の向こう側から今日の始まりを告げる太陽が登る。
明け方の切れるような寒さに、さすがに朝風呂はちょっと…と思っていたが
朝日に照らされて湯面から湯気がもうもうと立ち上がっていく様を見ていたら、うずうずしだして
気がつけば温泉に飛び込んでいた。
うむ、最高だ。
完璧な源泉ポイントを発見し、その付近だとかなりちょうどいい湯温。
すっかりからだもポカポカになっていい目覚ましになった。
準備をして出発。
その頃になると、ツアーの観光客が大挙してやってきた。
僕の泊まったレストランで朝食を食べつつ、温泉に入る模様。
いやいや、その前に入れてナイス判断だったなと思いつつレストランを後にする。
温泉効果は絶大で体の芯まで温まった体は寒さを感じず。
朝から快調に道を飛ばした。
小さなと峠といってもそこそこの傾斜の峠を2時間ほどかけてクリアすると目の前に綺麗な三角錐の山が見えてきた。
チリ・ボリビアの国境にまたがるリカンカブール山だ。
その山容は見事で、あの麓まで行くとボリビアとのお別れだ。
ウユニ塩湖北側から始まった悪路も後少し。
チリに入れば綺麗な舗装路が待っている。
しかし、苦労して辿り着くからこそ、格別の感動ももちろんあるわけで、
そういう意味ではこのリカンカブールを視界に捉えたときは、思わずうぉぉー!と叫んでしまったものだ。
そうして、最後の見所ラグーナヴェルデとラグーナブランカの湖畔に到着。
まずはブランカ湖。
ちょっと角度のない場所しかなかったので、上手く撮れていないがこのブランカ湖名前の通りミルキーホワイトが美しい、
柔らかい色の湖だった。
ツアーの目玉のラグーナヴェルデはこの湖に隣接したところにあるので湖畔をつたって回りこむ。
何やら前方に小さな泉が見える。
何湖だろう?ブランカ湖に比べると濁って見えるし、見劣りするなー。
ん、でも地図だとこの辺にヴェルデ湖なんだけど…
あれ、もしかしてここが…
そう、期待のヴェルデ湖はこの目の前にある変哲もない小さな泉だった。
これもあとで聞いた話だが、コロラダ湖同様、この泉も緑に輝く時間があるそうで、その時間は朝だった。
時刻はお昼。
すっかり湖は輝きを失って、ただの湖に成り下がっている。
なかなか魔法は長続きしないようだ。
唯一の救いが後ろにそびえるリカンカブール山。これとのロケーションは完璧で湖の真後ろに山が聳えていた。
というか、このヴェルデ湖、浅瀬を挟んでブランカ湖とつながっている。
高低差もあって流れ的にはブランカ湖の水がヴェルデ湖に注いでいるのもあって、
個人的な印象としてはブランカ湖の掃き溜めがヴェルデ湖といった印象だ。
先日のコロラダ湖が思いのほか良かったので、
ヴェルデ湖にはかなり期待をしていたのだが思わぬ肩透かしを食らってしまった。
まぁ、ブランカ湖が素晴らしいからよしとするか。。。
これも時間帯が違えば得られる感動も違ったのかな。
今回のルートは見所はくまなく回るようなルートを取ったけど、時間帯のことは盲点だった。
期待はずれのヴェルデ湖を後にし、アバロア保護区の出口とボリビアのイミグレを目指す。
出口はブランカ湖の向こうにあるので、左手にブランカ湖を眺めながら走る。
…つもりだった。
つもりだったというのは、最後のこの道がこれまででも最高にひどいコルゲーションだった。
たぶん地層も関係しているのだろう。
思い切り深く刻まれた幾重もの畝が僕の行く手を阻む。
ガタンガタンと凄まじい衝撃が手から伝わり脳天を揺らす。
ヴェルデ湖の失意もあるのだろう、かなり足取りが重かった。
ここで、最後の切り札と思って温めておいたレッドブルを投入。
大量のカフェインで感覚をごまかし、公園出口まで無理矢理に走りきった。
公園出口で入場券にスタンプをもらう。せっかくなのでパスポートにも押してもらった。
フラミンゴの絵が書かれたスタンプだった。
さて、保護区を出たもののボリビアのイミグレはまだ先。
ちょっとした峠越えの向こうだ。
さすがボリビア最後まで楽をさせてくれない。
10kmほどの峠を越えたところにイミグレはあった。
数km先はチリとのボーダー。
にも関わらずボリビアのイミグレはコンクリート建ての質素な建物だった。
イミグレ職員は“おお、よく来たな”といったかんじで気分良く僕を迎えてくれた。
多くのサイクリストがここを通って尋ねたのだろう。
彼は僕を喜ばす言葉を持っていた。
“あと8km先からアスファルトだよ”
ア・ス・ファ・ル・トー!!!
なんてゆう甘美な響き。
文明の香りがすぐそこまでやってきた。
そして、さらばボリビア。
かなり走るのは大変だったが、きっとここでしか見ることの出来ないスペシャルな景色と空はいつまでも僕の心に刻まれている!
なんだかんだ文句言ってすみません、また走りに来たいな。
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