2012年11月18日日曜日

塩の白銀世界

世界が一瞬で拓けたような、変わったような不思議な感覚にその瞬間襲われた。

昨夜の野宿を経て、10時頃に塩湖付近の集落に到着した。
ここで最後の補給をし、いざ塩湖へ。

ただここからが今まででも史上最悪の悪路、とゆうか砂地帯だった。
完全にタイヤが砂に埋れて全く漕げない。
全身全霊を込めて押さないと進まないという状況だった。

そんな中、視線の先にはウユニ塩湖の白を捉えていた。
遠目から見てもはっきりとそこから塩湖が始まるその境界線が分かった。
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結局1時間半ほどかけて砂地帯を抜けていよいよその白の境界線が目の前へとやってきた。
手前にあるちょっとした丘を越えた瞬間、白の地平が強い衝撃と共に広がった。
数時間前から見えていて、心の準備はとっくに出来ていたはずなのに、
飛び込んできた白の景色は激しく僕の心を揺さぶった。
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これがウユニ塩湖…

まだ末端部分にも関わらずそこには異次元のような、この世のものとは思えない景色だった。
白の世界と言えばアメリカ・テキサスのホワイトサンズ国定公園が思い起こされるが、
あちらが白の砂丘に風が作り出す風紋が美しい白と影の世界なら、こちらはただ白があるのみ。
たった一つの色彩でつくられる世界はなんとも言えない美しさであった。
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ウユニ塩湖はもともと海底にあったこの土地に大昔の地殻変動で地上に隆起し、
さらに外に流れ出る河川を持たなかったために
海の塩分がそのまま残る形となってこの塩の大地を作り上げたとされる。
このウユニに限らず、この近辺には無数の塩湖が存在する。
取り分けこのウユニがツーリストの支持を得ている背景にははっきりとした雨季と乾季があり
雨季には湖面にそのまま空を映しだしたかのような鏡張りが見れる。
逆に乾季になればしっかりと地面がしまり、白の世界を作り出すのだ。

日本人バックパッカーの多くは雨季のウユニを目指すことが多い。
南米を周遊するバックパッカーの多くはウユニの雨季に合わせて南米入りするほど影響力を持っている。
しかし地面の緩い雨季には当然ながら自転車は走れない。
だからチャリダーは乾季のウユニを目指す。
この大地を走ることは自転車に乗りはじめた頃からの夢であった。
そこにいよいよやってきた。

感動もそこそこに走りだすべくペダルに足をかける。

ぐらっ。

バランスを崩して慌ててブレーキをかける。

あれっ、ウユニって色んなスピード記録が出るくらいフラットで走りやすいって聞いたんだけどな。

改めて自転車にまたがる。

ぐらぐらっ。

ってここ…

コルゲーションダート並に走りづらいじゃんかー!!

憧れのウユニ塩湖走行は感動に浸る暇さえないほどにガタガタの路面だった。
パキパキっとまるで氷の地面を歩いているかのように乾いた音が響く。
時速は10kmも出ていない。
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加えて景色が全く変わらない。
遠くにいくつか島が見えるが、いくらこいでもそれは陽炎のように遠くに揺らめいて見えるだけだ。
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それに塩湖北側は火山の影になるところも多いようで、ぬかるんだ路面も多く、
ズブズブとタイヤが沈んでいきあっという間に塩まみれになった。
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そのため一部鏡張りになったところもあったが、自転車走行中となるとこんなとこに水張るな!という気持ちのほうが勝る。
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憧れの大地走行も楽ではないな…
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そう思いつつ5時間ほど漕いで、適当な場所にテントを張った。
テントを張り終える頃にはすっかり夕暮れ。
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白の地平はピンクから紫と刻一刻と色味を変えやがて闇夜に沈んでいった。
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すると突然に地平の上空からぼぉっと星がまたたきだした。

まるで、映画のラピュタで飛行石に鉱山の石たちが共鳴してキラキラと光り出したあのシーンのように。

あたりはすっかり星に囲まれた。
信じられないくらい星がきらめいている。
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3000mを越える土地なので夜の寒さもかなりのものになるが
そんなことも忘れてしまうぐらい、僕は夜空に心奪われていた。
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憧れの大地に僕はやってきた。
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秘技・分身の術
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