2012年11月8日木曜日

身勝手な来訪者

山頂で20分ほど時間を過ごした後、下山を開始した。
足場がはっきりと見えるのでだいぶ楽、とはいえ油断するとかなり危険だ。
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下山は僕が先頭で進む。
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見渡すことの出来るようになった世界も綺麗だ。
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軽快にペースをあげ…ようと思ったら、モトミくんが高山病を発症し、息も絶え絶えになっていた。
サヌキくんも登頂で体力を使い切っていたので、ペースをおとしてゆっくりと進む。

すげぇな、こんなとこ登っていたのか。暗闇って怖いな。
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相変わらずフリアンはマイペース。
自分の写真の撮りたい時に急に止まってはセバスチャンを待たせていた。

30分ほど下ると、これから山頂を目指す女性2人組とすれ違った。
あれっと思った。
昨日山小屋で見かけたときは3人だったはず。

と彼女たちは先頭の僕に話しかけてきた。

『仲間の一人が高山病になっちゃって…
300m下に置いてきたんだけど、危険かしら?』

おいおいおい!!!めっちゃそれ危険!!

高山病は標高を下げるのが鉄則だし、この山じゃ一人で下山も出来ないじゃん!!!

そう答えると彼女たちは
『彼女を山小屋まで連れ帰ってくれないかしら?』
と僕に頼んできた。

僕としてはもちろんそれはそうしたいところ。
しかし、僕らの命を握っているのはガイドのテオである。
テオの顔を見ると彼は思いっきり嫌な顔をしていた。

そもそも責任はガイドなしで登っていた彼女たちにあって、
それで仲間を置きざりにして山行を続けること自体おかしな話だろう。

それに彼女たちもここからだと登頂まで1時間30分はかかる。
気温も上がって雪が溶け出すし、引き返すのがベストだと思うが…

『あとでお金を払うからお願い』

彼女たちはそういって渋々テオを納得させた。
しかしテオからしたら嫌な話だろう。
だって一人で3人の安全を見なくちゃいけないのだから。
そしてそのうち2人は高山病だ。

結局彼女たちは山行を続行し登っていった。

下り始めてすぐに雪原にチョコンと黒い点が見えた。
あれが彼女たちの仲間だろう。

近くまで行くと寝袋に包まった女性が倒れていた。
辺りには何度も吐いたであろう黄色いシミがいくつか。
彼女を起こし、友達にお願いされた事を告げると、彼女は再び吐いた。
かなり重度の高山病の様子。

これを放置していくなんて…
それに恐らく彼女に寝袋など使えるものを置いていくつもりだったとは思うが
バックパックが2つあった。
これらを抱えて高山病の女性が一人で下山できるわけがない。
誰かに助けてもらうこと前提で置いていったことは明らかだ。

欧米人の特に女性は旅先でも会う機会が多く、話を聞くとその行動力に驚かされる機会がしばしばあるが、
でもそれはたまにこうやって後先考えず、自分本位の行動に出ることがある。
ガイドを付けずに、仲間が高山病になった時点で引き返すべきと僕は思う。

それでも目の前の女性に薬を飲ませ、彼女の荷物を手分けして担ぎ4人で下山した。
一方のフリアンはのんきにカメラをパシャパシャと…
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山小屋に女性を休ませた後、僕らは昼食を食べて山小屋を後にした。
あとでお金を払うといった彼女の仲間は当然その時間になっても現れなかった。

山から下りている途中、こんなにも例外的なことをしてくれるガイドたちに申し訳思った。
それにあの落石のこともあるし、明らかに彼らなしでは登頂出来なかった。

そんな思いもあってラパスに着いたら少しだけど彼らにチップを渡そうということになった。

そこで僕ら日本人の間でまとまったチップの話をフリアンにした。
そうするとフリアンが
『言っている意味が分からない』
と。僕の英語が拙かったのかなともう一度言い直すと
『だから言っている意味が分からない』と。
続けて、僕はどんなときもチップは払わない主義なんだと言った。

正直言って言葉にならないほど唖然とした。

チップって心の底から感謝した時、自然に出てくるものと思ったし実際僕らもこのときの気持ちはそうだった。
セバスチャンとほとんどマンツーマンで且つ、フリアンのカメラにとことん付き合ってくれたセバスチャンにはフリアンも喜んで提案してくれると思ったのに。。。
だいたい彼らヨーロッパ人の週刊であるチップに僕らですら渡したい!って思うほどなのに
本国の彼が払わない!って突っぱねるなんて、突然すぎてみぞおちを殴られた気分だった。

南米最貧国のボリビアにあって、僕らや彼らからしても大した金額にもならない程度のチップすら払いたくないなんて、
主義とか方針とか以前に、オマエに感謝の気持ちはないのか!!と怒りすらこみ上げてくる。

そんなことよりもと、『写真のデータくれよ!それと写真の撮った時間が日本時間に設定されてないよね?
ちょっとカメラの設定確認してくれよ』としつこい。
アイスクライムの写真なんかは自分じゃ撮れないから、写真データ欲しいのはわかるけどさ…

あの女性登山グループといい、フリアンといいその自分勝手さほとほと疲れた下山だった。
あのみんなで登頂した喜びすら消え去るほどに。

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