チャルワンカに着いても疲労感は全くなく。
いったい僕の体に何が起きているというのか。
次の街はアバンカイ。
リマからクスコへ向かうもう一つの道のアヤクーチョ方面との合流地点になっているのでそこそこ大きい街。
とゆうかナスカ~クスコ間で一番大きな街である。
距離にして約120km。
しかしその内の100kmが下り坂である。
アバンカイまで着けば、クスコも目の前に見えてくる。
それに前日、先行しているモトミくんがアバンカイに滞在していると連絡をもらっていたのでそれを励みに出発。
傾斜は極めてゆるい下りで一見すると平地?と見間違うほどであったが、ひとたびペダルを踏むと軽々と25km程のスピードが出た。
ここは間違いなく下りだ。
アンデス越えのボーナスステージは徐々に広がる川幅とともに颯爽とした風を引き連れて。
あっという間に100kmを下りきった。
下りきった先のガソリンスタンドに休憩によると、サイクリスト2人の姿が見えた。
オラ!挨拶を交わし、少し立ち話。
教師をしているというカナディアンの夫婦は以前も南米を走ったことがあるそうだが、その時ペルーだけは雨季で走れなかったそうだ。
今回はリマからラパスまでの旅程で、ナスカから来た僕とは違ってもう一方のアヤクーチョ方面から来たそう。
マチュピチュで会おう!と二人にサヨナラをし、アバンカイへ向かう登りの手前でレストランに入った。
とここでも自転車が。
今度はブラジル人サイクリストだった。
彼は僕らとは違って逆走ルート。
ブラジルからアラスカを目指すそうだ。
かなりの軽装備でかなり早そう。
聞けばブラジルからここまで1ヶ月で来たそうだ。。。
このブラジル人のブルーノと一緒に食事をとる。
逆走ルートなのでお互いのルート情報を交換する。
ちなみにブルーノは地図も持っておらず、ここから100km以上ずっと上りだよって教えたら顔がひきつっていたのであった。
ブルーノと別れた後はアバンカイへと続く最後の登り坂。
傾斜自体は緩やかだったが、この辺りの標高は1700mほどまで落ちてきていた。
日差しと気温が暑い。
昨日との気温差は40度近い。
とここで道脇の民家で談笑していたオバチャンたちが僕に気付いて、激しく手招きしてきた。
その様子に『んん?』と怪訝な印象を持ったが、ちょっとおもしろそうと思い寄ってみる。
するとおばさんの一人が家に猛ダッシュで戻り、コップに並々注がれた謎の飲み物を持ってきた。
『暑いでしょ。飲みなさい!』
普通であれば有難いご好意だが、手渡されたコップに注がれた液体は一見すると泥水のよう。
いやまぁ何かの果実を絞ったジュースなのは分かるのだが、明らかにそれは清涼感とは無縁の濃厚さを見ただけで感じ取れた。
しかしなぁ。。
おばちゃんたちは興味津々に僕がこの飲み物を飲む瞬間を見ようとしている。
おりゃ!!
覚悟を決めて一口。
オェぇ~、予想通りの濃厚さ、そして風味…
申し訳ないがこれ以上は飲めなかった。
ただ、残すのは申し訳なかったので手元にあったコーラで口直しをしつつ、そのコーラの入ったペットボトルにそのジュースを入れた。
『ありがとう、これは後で飲むことにするよ』
そう言って何とかその場を凌いだものの、コーラをここで飲みきってしまったため
ここからアバンカイまで、手持ちの飲み物はこの泥水しかなくなってしまった…。
続く暑さと登り。
どんなに喉が乾こうがちょっとこの泥水は飲むことが出来なかった。
アバンカイは谷底から600m程登ったところにあり斜面にそって市街地が形成されていた。
その日が日曜日だったからかは分からないが、商店が全くといっていいほどやっておらず
街道沿いには自動車関連のお店が軒を連ねていたが、どうにも活気がなく不気味に荒くれていた。
そして、アバンカイの看板を過ぎてから中心地までも地味に遠く、30分以上かかった。
セントロ近くにモトミくんが滞在しているという宿を見つけ、フロントに部屋番号を確認して部屋を訪ねる。
リマ以来約ひと月ぶりの再会となった。
そのまま彼と、どこの坂道がキツかったとか、あそこで休憩した?とかこのアンデス越えの話に花が咲く。
気がつけば一時間近く立ち話をしていた。
そうしていると、谷底で出会ったカナディアンも僕らのホテルに入ってきた。
このインペリアルホテル、値段も手頃でネット付き、そして何よりチャリダーに優しいガレージ付きのモーテルタイプの宿だった。
自転車の出し入れが楽なのでこの手の宿は有難い。
やっぱりチャリダーの宿選びというのは国籍問わず同じになるのだ。
おまけに夕食に向かった、ちょっと離れた中華レストランでも彼らにばったり。
安い・多い・ウマイを満たした中華は自転車乗りの味方である。
夜、宿に戻って部屋の前でモトミくんと談笑していると、隣の部屋の窓からおばあさんが顔をのぞかせた。
『ちょっとうるさかったかな?』と思いつつもまだ8時前。
そう思っていると、その息子と思われる人が出てきて
『子供たちが寝る時間だから静かにしてほしい』といってきた。
話し方からするにおそらくフランス人。
“子供たちが寝る時間”とかこつけてはいたが、あばあさんが、部屋の前にいるアジア人に対してあまりいい気を持っていないから言ってきたのは明らかだった。
だいたい子供たちのはしゃぐ声が聞こえてくる。
まぁ仕方ないので声の聞こえない2階の通路へ移動。
足元の部屋ではカナディアンの二人がお茶でも作るのか、部屋の前でガソリンストーブを焚いていた。
そのストーブの近くにフランス人家族の車があった。
『私の家の車の側で何やってんのよ!』とカナディアンの様子を伺いに行くおばあさんの姿が見えた。
『もうなんでこのホテルには変な自転車乗りがこんなにいるわけなのよ!!』
そんなヒステリックなおばあさんの叫び声が聞こえてきそうな夜だった。
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