一夜明け。
昨日の夜出ていった二人は結局朝になっても帰って来なかった。
もうこんなところはさっさと出発しよう。
昨日きた道を戻り、イカ市内を突っ切ると再び何もない世界。
一筋のアスファルトだけが無機質な直線を描いている。
今日から太平洋沿いを離れ、内陸に入るコース。
次、太平洋に会えるのはチリのビーニャ・デル・マルあたりかな。
目指すナスカはアンデスの麓の街。
一見平坦に見える道路も徐々に標高をあげていく。
とは言っても走っていても全く分からないレベル。
平地をこんなに飛ばせるのはもうしばらく無いだろうと、思い切り飛ばす。
途中、一体だれが利用するのか全く見当がつかない荒野にぽつんと佇むバス停で昼ご飯。
ただし、ハエが凄まじく多く、昼ご飯のラーメンを作るときも、食べるときも常に手で払いながら、動きながらとなってしまい全く休憩にならなかった。
しばらく走って、ちょっとした山岳地帯を下るといよいよ地上絵ゾーンが見えてきた。
あの台地の上が地上絵ゾーン。
といっても有名なナスカの地上絵はもう少し先で、ここはパルパという街。
全く知られていないと思うがここにも地上絵がいくつかあるのだ。
というものの僕もここはパス。
休憩だけして先に進む。
マリア・ライへの博物館が見えてきた。
彼女は地上絵研究にその生涯を捧げた人物。
ちょうどこの辺りから何故か道路から少し離れたところにお墓が目立つようになってきた。
地上絵が近いためか、遠くから地上絵ツアーのセスナのエンジン音が聞こえた。
まさか、これは墜落したセスナの乗客たち…?
それもけっこうな数のお墓があちこちに見える。
その博物館のあたりから続いた緩く長い坂道を登り切るとそれは見えてきた。
LINEAS DE NAZCA!!
いよいよナスカの地上絵ゾーンだ。
あれは学生時代の頃だからもう7年ほど前になるだろうか。
当時、上野の国立科学博物館で『ナスカ展』なる催しがあり、誘われるがままに見に行った。
会場ではナスカにまつわる発掘品や解説図などがあり、それなりの入場者がいたように思う。
そのナスカ展の最大の目玉がヴァーチャルシアターでコンドルの視点で地上絵遊覧をするというものだった。
確か、それはCGで再現されたものだったがなかなかの出来だった気がする。
今僕は本物の地上絵があるところにやってきた。
あの時の自分が、将来ナスカに行くなんてことを想像できただろうか?
広大な土地に、誰が何の目的で、どうやって描いたのか未だ分かっていない謎の絵。
その巨大な地上絵はセスナに乗って、上空から眺めないとその全体像を捉えることは出来ないのだが、
このパンアメリカン沿いには、一部、“木”と“手”を望む展望台があった。
入場料2ソルを支払い、塔に上る。
かなり、頼りないつくりでちょっと足が竦むが、背に腹は替えられん。
この向こうに太古のロマンがあるのだから。
頂上まで登って、辺りを見渡す。
『木』
『手』
ん?
太古のロマン…?
地上絵はしょぼかった。
『手』なんかは落書き?に思えるほど。
木なんかは全体像が見えないし、そもそもここから見えるもう一つの地上絵カメレオンに至っては
パンアメリカンの下敷きになって一部寸断されているし。
これでロマンを感じろというのは無理な話。
セスナに乗れば、他の地上絵も見れるし、また違った感想が得られるのかもしれないが
2ソル(約60円)の入場料ではロマンは買えないらしい。
7年前の自分へ。
まぁヴァーチャルシアターで十分っすわ。
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