ピチンチャ山から帰って来た翌日は一日休養日を設けゆっくり休んだ。
体力的に体調的にも問題ない。
ただ一つ、キトについて4日目カメラを盗られた日に食べた夕食を食べてから
ずっと水状の便が続いていたのが気がかりだった。
出発の朝、装備のレンタル屋にて集合。
9時の集合だったので、特別急ぐこともなくホテルの朝食を食べ、
いらない荷物を預け一旦チェックアウトしての出発。
明日の今頃、僕はコトパクシの頂きに立つことは出来ているのだろうか?
やれる準備はやった。
あとはひたすらに成功イメージを持って上るのみだ。
レンタル屋に行くと既に初老のおばさんが到着していて自分のギアの確認を行なっていた。
彼女はウルスラ。スイスから中南米の旅行に来ているそうだ。
けっこう、スペイン語もペラペラで聞けばメキシコで3週間勉強したそう。
多言語国家でイタリア語(スペイン語と似ていると言われる)も公用語の一つのスイスだから
そんな短期間でスペイン語の基礎をマスター出来たのかもしれないが、
その年齢で今なお衰えぬ探究心、それにこれから僕らとコトパクシに登ろうというのだから恐れ入る。
僕も同じく装備の確認をしていると、今度は女の子がやってきた。
オーストリア人のベリンダはキトの南400kmのところにあるクエンカでボランティアをしているとのこと。
オーストリアとオーストラリアを勘違いするのは僕ら日本人だけじゃなく
他の国の人達も同じようで、自己紹介をするといつも“あぁカンガルーの!”と言われるそう。
“それはオーストラリアだっつーの、まったく勘弁してよね~”なんておどける今時の女の子だった。
装備の最終チェックを終えると僕らのガイドになるマルコが迎えに来た。
英語堪能な明るい好青年ですごく印象がいいやつだった。
4人でトヨタのSUVに乗り込み出発。
30km南にあるマチャチの街で食料の買い出しともう一人のガイドのラウールと落ち合う。
マチャチを出ると未舗装の石が無理やり地面にねじ込まれたような
ガタガタの道に変わった。
時には車1車線の幅しかないような道もあり、ここで対向車がきたらどうするんだろうと
ハラハラしながら進んだ。
そして、よく分からない牧場の奥に佇むゲストハウスに立ち寄り、
もう一人、登山客をピックアップ。
カリフォルニア州出身のジョン。
もう標高は3500mくらいあるのにTシャツ一枚のいかにもって感じのアメリカ人だった。
このゲストハウスからはコトパクシが見えるそうだが、今日は雲がかかっていて
ここからはよく見えなかった。
再びダートのガタガタ道を行くと、ようやくコトパクシの公園ゲートに到着。
園内にはいると、ダートには変わりないもののそれまでとは見違えるような綺麗な道に変わった。
それに、景色は最果て感の漂う荒涼とした平地に変わっていた。
これがアルティプラーノだろうか。
ときおりコトパクシダウンヒルツアーと思しき自転車が目に留まる。
時間は午後1時。
園内にあるレストランで昼食ということで寄る。
そこでさらに2人仲間が増える。
ベトナム人のアンとポーランド人の男の子(名前失念)
かなりインターナショナルな登山隊がここに結成された。
レストランで、サンドウィッチ、バナナ、リンゴ、チョコレートの昼飯を摂り
ここで靴を履き替え、ジャケットを来て山仕様に着替える。
関係ないけどレストランのトイレ。
再び車に乗り込んで10数分走ると、コトパクシの麓の駐車場に到着。
この時点で標高4600m。
太陽が出ている時間帯だったので、寒さはそれほど感じないが風がとても強い。
コトパクシの山頂は相変わらず分厚い雲で見えないが、少し先に氷河が見える。
今日は駐車場からも目視できる4800m地点の山小屋を目指す。
距離にしても大したことないように見えたが、先日のピチンチャ山の頂上付近の砂礫地帯のように
ズルズルすべる深砂で歩きづらい。
自分の荷物もさることながらみんなで食料を手分けもっているのでそれもまた大変だった。
雪のない山小屋までは、地元民たちの観光スポットにもなっているようで
そこから下ってくる人も多かった。そいした人々は普段着で登っているし、まだ3歳くらいの子供もいる。
4000mを越える高地がない日本では考えられないことだけれど、
これがエクアドルにとってはスタンダードのようだ。
下ってくる彼らに、“山頂までか?頑張れよ”と声を掛けてもらうと否が応でもヤル気が出てくる。
1時間くらいかかっただろうか?
本日の宿泊地になる山小屋に到着。
但し今日は、これで終わりでなく荷物を置いた後に
ここから少し行ったところにある氷河の末端部分で
アイゼンとピッケルワークの練習。
傾斜も緩いところでの練習だったので皆滞り無くアイゼンを使った歩き方を身につける。
ガイドのマルコがじゃあオマケといって後ろ向き歩きを教えてくれた。
山を背負って、向こうに姿勢を反転させるとそこには得も言われぬ美しい世界を見下ろすことが出来た。
『うわぁ』
この場所でこれだけの風景だ。
山頂から世界を見下ろしたら、いったいどれだけのものが見れるんだろう…
考えると、体の奥のほうがゾクゾクとした。
4800m地点から見た原色の世界は、遥か上空、天空世界へと僕を誘うのだった。
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