カルタヘナを出て5日目。
これより1万km以上苦楽を共にするアンデス山脈の麓までやってきた。
アンデス山脈と聞くと、僕の場合ペルー、ボリビア、エクアドルあたりが連想されるがそこは南アメリカの屋台骨。
そんなことはなく、アンデスの北端はこのコロンビアから始まる。
北アメリカでもロッキー山脈、メキシコの西シエラマドレ山脈,グアテマラの山岳地帯等々それなりに山を走ってきたわけである。
あのアンデスといえども、いまの自分ならいけるはず。
そう思って、麓から60km先、標高2200mのヤルマルという街に狙いを定めた。
現在標高200mなので一気に2000mUPである。
その手前20km地点にもそこそこ大きな街があるようだったが、
そこは曲がりなりにも北アメリカを走ってきた自負がある。
このくらい出来ないようではこの先が思いやられる。
今の自分の力量を知るためにもヤルマルを目指した。
カウカ川を越えると一気に山岳地帯へ。
支流と本流で色が変わっている。
結果からいうと、
アンデス半端じゃねぇ。
もうきついのなんのって。
なんかたまに信じられないくらいの傾斜が現れる。
立ち漕ぎでリズムよく漕ごうにもたまに踏み込めないような激坂。
おまけにまだ低地なので湿度がひどく、すぐさまびしょ濡れで不快。
こんなのがこれから何ヶ月と続くのか…
考えただけでゾッとするが、まずは目の前の敵を片付けなければ。
幸いにもレストランや商店は所々にあったので早々にエナジードリンク投入。
これが効いたのかどうかは分からないが、さっきより多少踏めるようになる。
気づくとあたりの風景は熱帯から山岳の風景へと変わっていた。
登り開始から2時間半で最初の大きな街に到着した。
ここで朝用意した弁当で早めのランチ。
レストランで注文して食べると、どうしても時間がかかってしまうからだ。
日が暮れて山中でキャンプなんてのはさすがに避けたい。
休憩もそこそこに再出発。
濡れたTシャツを別なTシャツに交換したのだが、すぐさままたびしょ濡れ。
この辺りで標高1000mくらいまで上がってきたので下界ほど暑くはないが
周囲はガスっていたりして相変わらず湿度がとても高い。
それにしてもこの汗の量は尋常じゃない。
記憶をまさぐってもこんなに汗をかいたのはちょっと記憶にない。
それもそのはずで休憩後の道程は最初は傾斜が緩かったものの
すぐに傾斜が険しくなりとうとうほとんど漕げなくなってしまった。
まぁ押しても漕いでも5km程度なのでどっちも変わらないのだが。
びしょ濡れのTシャツが少しづつ体温を奪う。
一日限りの自転車ならこんなの気にせず踏めるのだろうが
旅行となると風邪をひく理由にもいかない。
Tシャツを絞って再び着用するととても冷たかった。
再出発してから2時間半後。
目印になる標識を見て愕然とする。
まだ15kmしか来ていない…
おまけに雨も降って来た。
最初の休憩までと違って商店などは影を潜め
あるのは黒いビニールシートで覆われた貧しそうな家と、
斜面に張り付くようにして牧草を食む家畜たちだけだった。
2枚目のTシャツも脱ぎ、別な服を着る。
雨対策にレインウェアも着用。
標高は2000m近くまで上った。
なのに街まであと20kmってことは、ゆっくり上ってくのかな…?
なんてことはなく山はひたすら登り続けて結局2400m地点まで伸びていた。
地図では2200mのヤルマルが最高地点ってかいてあったのに。
だから2200mを越えてからは、いつになったら上りが終わるんだと気をヤキモキさせながらの上りだった。
まぁおかげで下りに転じて、一気に登り切った達成感と眼下にヤルマルのオレンジ色の街並みが見えた安堵感はたまらなく格別だったのだが。
これぞウイニングランだな。
アンデス初日。
なんとか判定勝ちといったところだろうか。
先が思いやられるなぁ。
で着いたヤルマルの街。
これがまた激坂の街で今までのどんな街よりも急な斜面に家が集まっていた。
たぶん街の平均斜度は15度くらい。
全身全霊をもって押さないと自転車が進まない。
セントロ近くに綺麗で安いホテルを見つけて投宿。
これまでのコロンビアの街にはセントロらしいセントロがなかったのだが
このヤルマルという街は綺麗に整備されたセントロがあった。
とその近くに自転車屋を発見。
入り口に卓球セットや釣具を並べている変な自転車屋だったが
奥のショーケースにはまともな自転車パーツが並んでいる。
そして、こまかい部品が綺麗に仕分けされた引き出しにそれぞれ仕舞ってあり
一目で出来る自転車屋の予感がした。
が、カルタヘナで壊してしまったブレーキハンガーの在庫を聞くとやはりないとのこと。
(この辺の自転車を観察してみると、僕のブレーキハンガーに当たる部分が
フレームに直付けされていてあまり、単体でパーツは出回っていないようだ。)
がっくし。
と思ったら店員が奥のメカニックを呼んだ。
出てきた二人のメカニックは何やら相談を始め、
そしてどこかに電話をかけていた。
で夜の7時にまた来なよと。
え?直せるの!?
ちょっと半信半疑だったが、そこは一縷の望みをかけて時間を待つ。
定刻になり、お店に戻ると…
ブレーキが直ってる!!
まじですか!!
見ると別な自転車パーツを加工しブレーキハンガーになるように改造した自作品だった。
さっきの電話は金物加工屋に電話をしていたらしく、そこで加工されたものらしい。
ブレーキはメデジンで直ればラッキー、なければエクアドルで送ってもらおうと思っていたので
本当に嬉しかった。
それにしても自転車を預けてわずか2時間で復活するとは、おみそれしました。
これまでもパソコンやカメラを壊し、現地で修理してきたのだがなんだかんだこっちの人の修理技術ってすごい。
これが日本だったら、“パーツが生産終了しているので直せない”とか“修理まで1ヶ月かかります”とか法外な値段がかかるだろうに。
ちなみに今回の費用…
8000ペソ(5$)
好きです、コロンビア。
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