2011年9月11日日曜日

トンネルのその向こうに

ブライスキャニオンに後ろ髪を引かれながらも園内を出た翌日の朝。

89号線に戻って南下した僕はザイオン国立公園へと続くマウントカーメルJCTへと到着した。
道中風景・突然現れたジャンプ台。飛びませんでした



この道はザイオン国立公園を東西に貫いていて この先に公園の東のゲートがある。

ただし、一つ問題があった。

長いトンネルがあるらしい。
全長約1800mの長いトンネル。開通当初は全米一長いトンネルだったらしい。
果たしてそこは自転車で通れるのか…?
以前もこの道を通っているはずなのだがどうもトンネルの記憶がさっぱり無い。

ともかく、ここまで来たからには行ってみるしかない。

JCTを20マイル進むと公園ゲートがあり、まずは入園。
レンジャーに、この先トンネルがあって自転車は何たらかんたらと言われたけどうまく聞き取ることが出来なかった。

園内に入るとさっそくチェッカーボードメサという碁盤の目をした岩が飛び込んでくる。

園内の道路は非常に道幅が狭く、かつカーブも多いので走行に気を遣うが幸いにも緩い下りが続いていたので、漕ぐ分には苦労しなかった。

それにしても、ブライスとは違った絶景の連続。
カーブを曲がるたびに新たな光景が飛び込んでくるので、カーブを曲がるのが楽しみでしょうがない。


しばらく走るとトンネルの標識と共に、トンネル本体が見えてきた。

あれが噂のトンネルか…

ヘッドランプ、ハンディライト、テールライトを全て点灯させ準備万端。
突入開始!…もすぐ先に明かりが見える。
あれ…?

両端から明かりが差し込むのでライトもいらないくらい視界もはっきりしている。

かなり気合入れて突入したのに肩透かしを喰らってしまう。

あっさりトンネルを出ると、前方に渋滞が見える。その先には再びトンネル。
どうやら本丸はこっちのようだ。

トンネル内の事故を防ぐべく、入口に係員が立って交互通行を促している。

車の列に僕も並び、列が動き出す。
周りを見ても他に道が無さそうだったので、ここで係員に止められてしまうと為す術がない。

係員とすれ違うときに極めて普通に挨拶をして通った。

自転車の僕を認知した係員は、何か僕に言っていたが交通の流れを止めることが出来ずそのままトンネルに突入してしまった。

トンネルに入った途端、気温がグッと下がる。
内部はリフレクターも街灯も無く真っ暗な世界。
暗黒世界と言った方が適当かもしれない。

持っていた明かりは全開にしたが、光はすぐに闇に吸い込まれて全く約に立たない。
古いトンネルなので路面もガタガタ。
ここで対向車が来たら確実に轢かれてしまう。

トンネルに入ってしまったことを大いに悔やんだ。

といってもそんな落ち込む間もないので、必死に慎重に走った。
道が悪い分、車もゆっくり走っているので、頼りは100m先に見える先行車両のテールランプだけ。
500mおきぐらいに横窓がくりぬかれて光が差していたが、そんなとこでおちおちしていたら対向車輌が来てしまう。

10分にも満たない時間だったと思うが、あんな暗闇は初めてだった。
なんとか撮った唯一の一枚

ようやく出口が見えたときは心底安心した。

出口に出て、落ち着ける広いエリアに着いてようやく人心地がつく。

ふと、顔を上げてみると、トンネルの向こうとはまた違った風景が大パノラマで広がっていた。

ここから、九十九折が続き一気に標高を下げていく。
この風景を眺めながらの下り坂。たまらず歓声をあげながら下る。


写真を撮った横穴はこちら

さっきまでの恐怖も忘れて夢中で写真を撮りながら下り、最下部と思える場所に行くと、そこには…
レンジャーが待ち構えていた。
ですよね。。

『あなたトンネルを通ったでしょう?』

明らかに悪いのは僕なのでひたすら謝り、許しを請う。
そして僕の旅のルートを説明したら、今回だけ見逃してくれた。

『次やったら逮捕するよ』

笑顔で言われてしまった。

まぁ、今後アメリカにおいて自転車走行不可なところを走る予定も無く、ここが最初で最後の関門だったので通り抜けた後に怒られただけよしとしよう。

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