中でもブライスキャニオンが忘れられない衝撃だった。
園内に入ってリムに出た途端に目の前に無数の尖塔群が飛び込んできた。
呆気にとられる間もなく、夕暮れ時、尖塔群はますます赤味を帯び影を伸ばし表情を変えていった。
日が暮れて、夜になると今度は星たちが騒ぎ出した。この地は標高が2000mを越える高地で当たりに何もないことから圧倒的に星が輝いていた。
明け方、サンライズを見た後、流し込んだホットココアは極上の甘さで体を温めてくれた。
いま振り返ってみてもパーフェクトなキャンプだったように思う。
そのブライスキャニオンに今度は自分の力で辿り着こうとしている。
カナダ国境から続くUSハイウェイ89号線。
僕はこの道にチーフマウンテンゲートを下りて来てぶつかった。
“人里最高!!”と叫んでしまったあの場所からだ。
それ以来、一時的に道を外れることはあったにせよ基本的にはこの89号とともに南下してきた。
南下してきてみて初めて知ったことだが、この道はブライスキャニオンへと続く道でもあった。
つまり、3年前に通った道。
自転車で通った道とクロスするポイントはまだ先のアリゾナ州だけれど、それでもこうした点と点が線になる瞬間って一気に世界が広がる感じがしてとても気持ちがいい。
見えてきた、あれがクロスポイントだ!
かつて確かにここを僕は通っている。
がしかし、いざ自転車を走らせて見ると当時の記憶が曖昧なことに気付く。
こんなところにストアがあったっけ?こんな通りあったっけ?など。
逆にレンタカーで走った当時は、さらのその昔自転車で走った道を通ってその記憶の鮮明さに驚いたものだ。
ここを曲がればストアの看板が見えるとか、○○まであと何マイルなど…。
どうもレンタカーで走るのと自転車で走るのでは同じ道でも感じ方が全く違うらしい。
車はほぼ視覚の情報だけで景色が変わってしまうが、自転車は五感をフル活用して進んでいく乗り物。
視覚から得る情報というものがいかに曖昧でいい加減かということを思い知った。
やがて長い坂道がはじまり当たりの岩が急に赤味を帯びてきた。
“レッドロックキャニオン”だ。
不意に現れた巨石群を眺めながら自転車を走らせる。
このあたりは、側道にサイクリングロードが通っていて風景を楽しみながら走るにはうってつけだった。
相変わらず坂道は続くが、進路を東に変えたことで今までさんざん向かい風だったのが、ここでは追い風に変わった。
岩石地帯を抜けるとフラットな草原地帯に出た。
僕の断片的な記憶だと、もうすぐブライスキャニオンだ。
頂上は7777fらしい。本当かな |
公園のゲートシティだ。
さらに奥に進むと公園ゲートがあり入場。
帰ってきたぞ!
ゲートを出てすぐのキャンプ場にチェックイン。
チェックインっていってもここはキャンプ場オフィスなどなく、自分で空きサイトを見つけて封筒に料金を入れて投函するという仕組み。
ここにはハイカーズサイトはなく、通常のキャンプ料金を取られてしまう。
せっかくなので、以前泊まったサイトを探してみたが残念ながら埋まっていた。
仕方がないのでその斜め向かいの空きサイトにテントを張る。
テント設営をして少しゆっくりした後、リム沿いを歩くことにした。
リムに出た途端に異質な光景が広がる。
『やっぱ、すげぇ』
初めて見た時の衝撃はもう感じないが、それでもゾクゾクと心を震わせる光景だった。
夕暮れ時だったので歩くごとに影の入り方が変わっていった。
1時間ほどリム沿いを歩いて、帰りは園内を走るシャトルバスで戻ろうかと思ったけどタッチの差で最終便を逃してしまったので、また来た道をゆっくり戻った。
深夜、トイレにテントから這いずり出ると、より一層星がくっきり見える。
星や星座のことはさっぱりだけれど、肉眼でもはっきりと天の川が見えた。
(写真は暗すぎて取れませんでした)
さて翌日。
高いところから眺めてるだけでは、立体感をつかめないので谷に下りてみることに。
見所が多いナバホループトレイルは以前歩いていたので、今回はクィーンズガーデントレイル~ナバホループ~ピーカブートレイルのコンビネーショントレイルを歩くことした。
前者二つは人気のトレイルなので、たくさんの人で賑わっていたが、ピーカブートレイルの分岐を越えると人気が減りトレイルを独り占めして歩くことができた。
朝から歩いたので涼しい午前中に終点のブライスポイントへ到着することが出来た。
帰りは今日こそシャトルバスで。
やっぱりOne Wayは楽チンでいいな。
午後はシャワーを浴びて洗濯をし、テントでは日差しがきついのでストアのテーブルでポストカードを書いたりしてのんびり過ごした。
充実の2日間。またここでキャンプしたいなぁ。
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