2011年8月19日金曜日

ボーズマンの街その2

閉店後のお店を訪ね、そのまま車で渡辺さんの自宅まで連れて行ってもらう。
渡辺さんの家は昼間にいったロッキー博物館の向かいであった。

家に入るなり、僕はこの家のご主人を差し置いてシャワーを頂く。
シャワーを出ると奥さんが、

『洗濯物もたくさんあるんでしょ?』

と言ってくれたので、至れりつくせりで申し訳ないと思いつつも、ご厚意に甘えることにした。
洗濯機はバンフで泥まみれで使って以来で、毎日手洗いだったので本当に有り難かった。

ダイニングに行くとたくさんの日本食が用意されていた。
枝豆、さきいか、お寿司、そしてビール!

食事を囲みながら、渡辺さんとたくさん話をした。
渡辺さんは熊本の出身で学生時代に隣のワイオミング州に留学を経験していて、この辺りの土地がずっと忘れられずに一念発起。
5年前に、ここボーズマンにレストランをオープンさせた。

『なんでSushiじゃなくてJapanese  Restaurantなんですか?』

僕が訊ねると、Sushiはすぐ外国人がイメージする日本食だけど、この街でこの国の人たちに本当の日本食を知ってもらいたいという渡辺さんの熱い思いがあるそうだ。
確かに僕らは、日本で暮らしていてもお寿司は晴れの日に食べる特別な食べ物だし、ほとんどの日常はうどんや定食とか丼ものを食べているもんなぁ。

『でも、そういう定食とか丼ものこそ日本食の魅力ですもんね!』

と僕が言うと

『馬鹿、日本人にそういわれるのが一番うれしくないよ』

と渡辺さんは笑って返した。

開業当初は、本当に苦労の連続だったそうだ。
コロッケなど凝ったメニューも入れたりしたが、なかなか受けなかったり、アルバイトに仕事を教えてもすぐ忘れてしまったり…

でもそんな時にはいつも渡辺さんが奥さんに

『いつかそのうちいいことあるよ』

と言うそうで、奥さんは

『でも全然、いいことがやってこないのよね~』

と言う。
でも、その言葉とは裏腹は揺ぎ無い信頼や愛情といったものが、二人の会話からの節々から感じ取れ、素敵だなと思った。

なにより、年齢に関係なく今なお挑戦を続けている渡辺さんご夫妻。
『やりたいって思ったら自分がやらなきゃ』
と二人揃って話していた姿がとても印象的だった。

会話も盛り上がる中、奥さんに熊本ラーメンを作っていただいた。
すでにお寿司を完食し、さらにここにお邪魔する前にピザをたらふく食べていたので本当に申し訳なかったが食べ切れなかった。すみません…。

他にも、お二人の若い頃の話や、僕の旅の話、熊本と福島の話…

話題は尽きることが無かったが、夜も更けてきた。
僕は時間はたっぷりあるが、お二人は明日も仕事がある。
切りのいいところでお開きとなった。
…というより、満腹+ビールですっかり酔っ払った僕を気遣ってベッドを案内してくれたというのが実際かもしれない。

締めのとき、渡辺さんが僕に言う。
『たくさん日本人の観光客が来るけど、自転車でっての珍しくてさ、南米まで行くって言うからメキシコは危ないぞって一言言いたくて家に呼んだんだよ。』

たぶん、注意喚起って理由もあると思うけど、僕にはなんとなくその言葉以上にたくさんの思いが込められている気がした。

『時々、旅の近況を知らせてよ。そして旅が終わったら熊本で馬刺しを一緒に食べような』


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