2011年7月29日金曜日

アメリカ入国

前の晩からの曇天が朝になっても一向に回復しない。
雨は止んでいたのでテントを撤収し、出発準備をする。

今日は国境越えなので早めに出発したかったけれど、この空模様で
前回の失敗があるので、ゆっくりカフェでモーニングをすることにした。

カナダであまり、まともな朝食を食べていなかったので最後に奮発してみた。
注文を待っている間に、再び外が雷雨に見舞われていた。
一呼吸おいてよかったなと、優雅な気分で朝食を頂く。
パンの上に乗ったオレンジが綺麗に皮も向かれていて程よい酸味とソースの甘みが絶妙だった。
小1時間ほど、コーヒーを飲んで雨待ちをすると外に青空が戻ってきた。

アメリカへいざ行かん!

このウォータートンレイクス国立公園とこれから向かうグレイシャー国立公園は国境を挟んでカナダ・アメリカの友好の象徴として二つで一つの公園として制定されており、世界遺産にも登録されている。(の割には入場料はそれぞれ別にかかる)
そして夏の間だけ国立公園内に国境ゲートが開かれているのだ。
アメリカへ渡る国境は他にもあったが、せっかくなので公園内のchief mountain gateからアメリカ入りすることにした。

街から国境までそれほど距離はないのだがけっこうな坂道が続いていて雨上がりの湿気で汗がダラダラ吹き出てくる。
その汗に反応してか、小バエが常時10匹程僕の周りをまとわりついてくる(河で汗を流すと一時的に寄って来ないので多分汗です。)
上り坂ででスピードも出せないので振り切ることが出来ず、息を吹きかけて追い払ったりしていたので余計に疲労が増してしまった。

2時間かけてようやく国境到着。

入国審査のために帰りの飛行機のチケットも用意していたのだが、特に見せろと言われる事もなくあっさりと入国審査完了。
僕の心配は杞憂に終わったようだ。
ちょっと肩透かし&せっかくチケットを用意したので損した気分になるものの、とにかく2ヶ国目・アメリカ合衆国入場だ!
この国には何度か来た事があったので、改めて数え直してみるとなんと7回目の入国だ(陸路でカナダやメキシコから再入国したのを含む)

しかしアメリカ入国したとはいえ、この国境は山の中にポツンと立つゲートなのですぐに景色が変わることなく森は続く。
しかも国境がサミットかと思っていたが、その先もアップダウンに苦しめられる。

ひぃこら言いながら走っていると、道の先に黒い物体が…
牛である。
ずっとこっちを見ている…
普段は柵の内側にいるのでなんてことないのだが、野放しで道路に立ちはだかるその姿は圧倒的そのもの。いや僕が臆病なだけか。
牛に襲われたなんて話は聞いたことないけれど、あの巨体で体当たりされた日には一発でお陀仏に違いない。
本気で走るバッファローは時速40~50kmで走るらしい。
バッファローと牛とは違うのかもしれないけれど、数日前にバッファロー博物館を訪ねて余計な知識を得たばかりなので、余計に牛が恐怖の対象に見えてくる。

しばらく彼と見つめあい、僕に敵意はないことを伝え、彼が去るのを待つが彼の視線は僕に釘付け。
そりゃこんな辺鄙な道に人間が通れば興味は津々なわけだ。
たまに通る車と一緒に一気に駆け抜けようにも、上り坂でせいぜい本気で漕いでも20km程度。
あっさり捕まってしまうだろう。
おまけにちょっと下ってきたので前後ともに上り坂。まさに袋小路に追い詰められた気分だった。

時間にして3分くらいだと思うけれど、色んなことが頭のなかを駆け巡った。
例えばこれが人間だったら、言葉は通じなくてもなんとか伝わるものがあるけれど、動物や天気、自然は容赦なしだから怖い。
悩んで悩んで、そぉっと彼の横を通ることにした。

ゆっくりゆっくり…
襲ってくるなよ~と祈りながらペダルを回す。

その距離10m、9m、8m…


…おや?

なんだか大丈夫そうだぞ…?

襲ってくる気配が無さそうだったので、ならばとばかりに僕はカメラを取り出した。
電源を入れ、牛にピントを合わせる『ピピッ』っという音がなった瞬間…

ガサッ!! 

音に反応して急に牛が動き出したのだ!!

動き出した方向は僕の方ではなく、僕から逃げるように走っていった。

どうやら何かされると思ったらしい。
これには僕もビックリして自転車で転びそうになった。
しかも、その脇の茂みから他の牛たちが5匹、6匹とたくさん出てきて一緒になって逃げている。

『こんなにいたんだ…』


呆気にとられながらも、とにかく自分の身の安全が確保されたことにホッとする。

『そうだよな、襲ってくるわけ無いよな』

ようやく冷静な思考状態に戻って彼らを横目に見ながらやり過ごす。


その後も同じような状況が何回かあったが、問題なく通過する。

走ることさらに2時間ようやく頂上に到達したらしく、あとは一気のダウンヒル。

しばらく下ると、メインロードのUSハイウェイ89号のジャンクションが見えてきた。
89号に合流すると、道も格段によくなった。
交通量は多いが、路肩が広くなり、アップダウンも緩くなった。
思わず、『人里最高!!』と叫んでしまった。
ただし、悪い変化もあった。
道端へのポイ捨てがカナダに比べ格段に増えた。
しかもその大半が、ビール瓶や缶だ。
カナダではアルコールを買える場所が限定されているけれど、こちらでは普通にストアで購入することが出来る。


入手の難易度が変わるだけでこうも違ってくるとは…
それにこれだけポイ捨てされているのを見ると、ドライバーたちは皆平気で飲酒運転をしているんではないかと勘繰ってしまう。
いくら僕が交通安全に気をつけていても、これでは全く意味がないではないか。
そうはいっても僕に出来ることは道の端っこを走ることだけなのだけれど。


なんてことを考えていると、間もなくガソリンスタンドを兼ねたストアが見えてきた。
本日の目的地、グレイシャー国立公園は目の前だったけれど、一息入れることにした。

いつものようにアイスを物色…
むむ、値段が安くなっているぞ。
品揃え自体はほとんど変わりないのだが、全体的に4分の3~3分の2ぐらいになっている。
米ドル⇔カナダドルのレートを知らない状態だったので円換算で考えてみると、昨今の円高も手伝って大袈裟に言うと、カナダの半額くらいに見えた。
カナダでは物価高に苦しんだので、アメリカもそう変わらないのかも…と半ば諦め気味だったのだが、国境付近の小さなストアでこの値段なのだから、大きな街のストアへいけばもう少し値段も下がるはず。


うきうき気分でグレイシャー国立公園へ向かった。




 

0 件のコメント:

コメントを投稿