2011年6月2日木曜日

県境の攻防

仙台から福島へ向かう際はシティラビットという快速列車を利用した。
仙台~福島間を1時間弱で結ぶため、これを使えば福島もギリギリ
仙台への通勤通学圏内となる。

そのシティラビット内での出来事。

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午前の福島行きに乗り込む人の数はまばらで各々が自由に席を選んで座っていた。
僕もボックス席の広い席を確保し、夜行バスの疲れも手伝って気づいたら寝落ちしていた。
ウォークマンもしていたので外界は完全にシャットダウン状態だったのだが、
ふと人の気配がして目が覚めた。

どうやら切符の車内改札のようだ。

東北線は未だに自動改札でない駅も多く、乗客のキセル乗車を防ぐため
車内での改札が時々行われる。

斜め向かいの乗客の様子がどうもおかしい。
寝ているようだが、駅員がいくら声をかけてもピクリともしない。

『!!』

ピンときた。
コイツはキセル客だ!!
恥ずかしい話だが、僕も高校生の頃、これよりも酷い悪さをしでかしJRの車掌に
こっぴどく叱られた経験がある。
同業者の勘が、コイツはキセル乗車だと訴えかけてくるのだ。
寝ぼけ眼は一気に、乗客対車掌の戦いで目が覚める。

『お客様ー』
変わらず車掌は声を掛ける。

『……』
見たところ20台前半の乗客はトンガリ靴で脚を組み少年誌を開いたままピクリともしない。

『またお願いします』
気の弱そうな若い車掌は次の乗客の改札へと去った。

第一ラウンドは乗客の勝利。
車掌が去った後も乗客は姿勢を崩すことなく目を閉じていた。
確かに、乗客全員の改札が終わったら車掌も戻ってくるもんなぁ。
コイツはなかなかのやり手だぞ。

終点の福島まではあと20分。
さてどうなるものか。

そして終点まで残り2駅を切った頃、第二ラウンドの火蓋は切って落とされた。

車掌の視線はキセル客のみに注がれ表情はさっきまでと違って決意に満ちている。
そしてキセル客の前に止まった。

『お客様、切符を見せてください』

『……』
それでも微動だにしない。

『お客様』

『……』
あまりのシュールさに噴出しそうになった。
痺れを切らした車掌はここで伝家の宝刀を抜く!!

『お客様』
肩をトントン。
『……』

『お客様』
さらにトントン。

『…ん?』
わざとらしい声で乗客は目を覚ました。
これで車掌の勝利は確定した。

『車内改札です。切符を見せてください』

乗客は寝ぼけを装いつつ、自分のポケットを探るが切符は出てこない。
そりゃ当然だ。だって元々持ってないんだもの。

それでも演技は続き、もっていたカバンをまさぐるも出てこない。
持っていた二つのカバンを探したところであえなく投降。

『(切符)なくしました』
車掌大勝利。

『なくした場合は始発からの切符をお求め頂くことになります』

『はい』
あっさり車掌にお金を払っているところで完全にこいつはクロと断定できた。
払うべきお金を払っているだけだから、素直に支払っている。
乗務員室に戻っていく車掌の後姿は勝利のオーラを纏っていた。

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いやぁ久々に手に汗握る戦いだった。
そこらの映画なんかよりリアリティがあっておもしろいんじゃないか。
いいものを見れた。

ちなみに僕の隣に座っていたおっさんは改札がきたとき、あっさり
『差額支払います』
とお金を払っていた。
どんだけ、キセル乗車多いのよ…

車掌って大事ですね。

2 件のコメント:

  1. オモロイなじゃないの。
    久々の実家だってね。親孝行しいや(笑)

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  2. そうですね~、お土産一つ買わずに帰ってきた親不孝者なので(笑)何か一つはしてあげなくちゃと思います。ちなみに名古屋の人たちにはお土産ありです。ご期待ください!!

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